古川のひとりごと

星に呼ばれた夜道

古川太郎 /  / 車のこと

用事もないのに、夜の道へ出てしまう日があります。ライトの先だけがやけにはっきりして、あとは静けさばかり。

この辺りは、少し走るとすぐ街灯が消えてしまいます。両側が田んぼになって、家の灯りも遠くにぽつぽつ。心細いと言えば心細いのだけれど、僕はその真っ暗な道がわりと好きでした。前の車も後ろの車もいなくて、世界に自分ひとりみたいな夜です。

ある晩、なんとなく車を路肩に停めて、エンジンを切ってみたことがあります。ヘッドライトを落とした途端、目の前にぶわっと星が出てきて驚きました。街にいると見えないだけで、空はずっとこんなに賑やかだったんだなと。フロントガラス越しに、しばらくぼんやり見上げていました。

車の中というのは、不思議と落ち着く場所です。外は冷えていても、シートはまだ少しあたたかい。ラジオを小さくかけて、暖房の音だけが静かに鳴っている。誰にも急かされず、ただ星を眺めるだけの時間が、僕にはちょうどよかったのだと思います。

帰り道、また街灯が増えてくると、あの静けさがちょっと惜しくなります。でも、いつでも戻れる場所だと思えば、それでいい。星はだいたい、いつもそこにいてくれるので。

夜の田舎道、覚えてますか。怖いような、心地よいような、あの感じ。用がなくても、たまには出かけてみてください。空が、思っているよりずっと近くにあったりします。


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