古川のひとりごと

夏の名残を乗せて

古川太郎 /  / 車のこと

少し涼しくなった風が車内を抜けていく。そんな夕方に、僕はよく当てもなく車を走らせます。

八月も終わりに近づくと、昼間はまだ暑いのに、夕方の風だけが先に秋を連れてくる気がします。窓を少し開けて走ると、ついさっきまで張りついていた蝉の声が、いつのまにか虫の声に入れ替わっている。その境目みたいな時間が、僕はけっこう好きなのです。

あてもなく田んぼ道を流していると、西日が稲をぜんぶ金色に染めていました。色づくにはまだ早い、青さの残る稲穂が、光だけ借りて光っている。信号もない一本道で、僕はわざとゆっくり走ります。急ぐ理由なんて、どこにもない夕暮れでした。

夏の終わりって、なんだか少しさみしいですよね。あんなに長く感じた休みも、過ぎてしまえば一瞬で。子どもの頃、宿題を抱えてこの空を見上げていたのを、ふと思い出したりします。

そんなときは、車を停めて、冷めかけた飲み物をひとくち。流れていく雲を眺めて、また走り出す。それだけのことが、なぜか心に残るのです。

夏よ、もう少しだけ。そう小さくつぶやいて、僕は家路につきました。来年の夏も、たぶんまた、この道を走っているのでしょう。


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