予定のない休日、僕はときどき近所の図書館へ出かけます。読みたい本が決まっているわけでもないのに。
本棚のあいだをあてもなく歩くのが、僕はけっこう好きです。背表紙をぼんやり眺めて、知らない国の地図帳をめくったり、料理の本に出てくる写真でお腹を空かせたり。借りるかどうかは、その日の気分しだい。なにも借りずに帰る日も、ちゃんとあります。
宮城県北の冬は、外に出るのもひと苦労です。でも図書館の中はあたたかくて、窓の向こうで雪がしずかに降っているのを、椅子に座って眺めていられる。あの時間が、僕にとっては小さな贅沢なのかもしれません。コーヒーは飲めないけれど、そのぶん本のにおいでなんだか満たされる気がします。
ページをめくる音と、誰かが椅子を引く小さな音くらいしか聞こえない。せかされない場所って、案外少ないものですね。スマホの通知も、ここではなんとなく見ないでおこうと思える。それだけで、肩のあたりがふっとゆるみます。
結局その日も、僕はぱらぱらと数冊めくっただけで帰ってきました。なにを読んだかはもう忘れてしまったけれど、しずかだったこと、あたたかかったことは、なぜか覚えています。覚えてますか、なにもしなかったのに、妙に満ち足りた休日の帰り道。あれくらいの一日が、僕はちょうどいいのです。