渋滞にはまったとき、僕はあまりイライラしないほうです。ぼんやり前を眺めているうちに、なんだか時間がやわらかくなる気がするのです。
夕方の国道で、車がずらりと連なって動かなくなることがあります。少し前までの僕なら、ハンドルを軽く叩いたりしていたかもしれません。でも最近は、まあいいかと肩の力を抜いて、前の車のうしろ姿をただ眺めています。
前を走る車のリアガラスに、小さなステッカーが貼ってあったりします。子どもが乗っていますの黄色いやつだったり、どこかの温泉の丸いシールだったり。会ったこともない誰かの暮らしが、ほんの少しだけ透けて見えるようで、僕はそういうのを見つけるのがけっこう好きです。この人はどんな道を走ってきたんだろう、なんて勝手に想像してみたりして。
田舎の感覚というのか、急いだところで一台ずつしか進めないのだから、と思うと不思議と気が楽になります。窓の外では田んぼが夕陽でゆっくり色を変えていて、遠くの山もいつもどおりそこにいる。渋滞の列に混じって、僕もその景色の一部になっているような気がしてきます。
やがて前の車がそろりと動き出して、列がまた流れはじめる。あんなに長く感じた時間も、過ぎてしまえばあっという間です。急がない時間の中で、ぼんやり考えごとをするのも、僕にとっては悪くないひとときなのでした。