古川のひとりごと

道草の時間が好きで

古川太郎 /  / 車のこと

用事もないのに、ただ走りたくなる道ってありませんか。僕には、いくつかあります。

夕方、なんとなく時間が空いた日。僕はよく、川沿いの道へ車を向けます。目的地は、特にありません。コンビニで温かい缶コーヒーを一本だけ買って、あとはただ、流れる景色のなかをのんびり走る。それだけのことが、なぜだか好きなのです。

県北の道は、田んぼと山がずっと続きます。季節によって色が変わって、夏は青々として、秋になると一面が金色に。窓を少し開けると、土と稲のにおいが入ってきて、ああ帰ってきたな、という気持ちになります。信号も少ないから、エンジンの音と、タイヤが路面を撫でる音だけが、静かに耳に残ります。

夕方の光が好きで、山のほうへ日が傾くと、道がオレンジ色に染まります。ハンドルを握る手まで、ほんのり暖かい色になる。そういう瞬間に出会うと、ちょっと得した気分になって、つい鼻歌のひとつも出てしまいます。

どこかへ行くために走るのもいいけれど、道そのものを楽しむ時間も、僕は同じくらい好きです。立派な目的地なんてなくていい。ゆっくり走って、景色を眺めて、また家に帰る。その繰り返しのなかに、ささやかな幸せがある気がしています。

今日もまた、用事もないのに、あの川沿いを走りに行こうかな。皆さんにも、そんな道が一本くらい、ありますように。


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