夜中にふと目が覚めると、屋根を雨が叩いていた。僕はそのまま、しばらく耳をすませていた。
最初は窓のあたりから聞こえてくる。ぽつ、ぽつ、と数えられるくらいの間隔で、ガラスの一点を小さくはじく音。それがいつのまにか数を増やして、面になって、屋根全体がやわらかく鳴りはじめる。粒の細かい雨は、すうっと長く尾を引くような音がする。粒の大きい雨は、軒先で一拍おいて、たん、と落ちる。
明かりは消したままがいい。暗い天井を見上げていると、音だけが部屋いっぱいに広がって、自分が小さな箱の中にすっぽり収まったような気持ちになる。雨どいを伝っていく水の、ちょろちょろという細い音まで聞き分けられる。どこか遠くで、樋から地面に落ちる水の音が、規則正しく時間を刻んでいる。
不思議なもので、雨の夜はやけに静かに感じる。音はずっと鳴っているのに、その音が外の世界をやさしく覆い隠してくれて、よけいなことを考えなくて済む。僕は布団の中で膝を抱えるみたいにして、ただ、降っているなあ、と思う。それだけで充分だった。
いつ眠りに落ちたのかは、いつもわからない。気づくと朝で、雨はやんでいて、軒先からまだしずくが落ちている。あの音にくるまれて眠った夜のことを、僕はなんとなく好ましく覚えている。