鳴子温泉の湯元エリア、湯けむりの立ち上る坂道を少し上った先に、生蕎麦 登良家(きそば とらや)はあります。JR鳴子温泉駅から徒歩3分ほどの立地で、温泉街の散策や湯めぐりの合間にすっと立ち寄れる場所にあり、木の質感を生かした落ち着いた店構えが目印です。1階が昼のそば処、上階が旅館という構成で、食事と源泉かけ流しの湯の両方を楽しめる点が、他のそば店にはない登良家ならではの持ち味です。湯元は鳴子温泉郷の中でも硫黄泉の香りが街全体に漂うエリアで、その空気の中で暖簾をくぐる時間そのものが、大崎市の温泉旅の醍醐味と言えます。冬は雪が屋根に積もり、夏は蝉の声が坂道を包み、四季ごとに玄関先の景色が変わっていくのも老舗らしい味わいです。
看板は、国産そばを石臼で挽いた自家製の生蕎麦。だしには焼津・枕崎の鰹節を用い、創業以来受け継がれてきた出汁づかいが評判で、なかでも創業からのつゆをベースにした鴨南蛮そばや、あたたかい鴨だしにつけて味わう鴨せいろ、温泉地らしいカレーそばなどが人気の一品として語られています。冷たいざるそばに鴨の温かいつけ汁を合わせるスタイルは、そばの香りと鴨の旨みが引き立ち、寒い季節の鳴子でとくに沁みる味わい。価格帯はざるそばで千円前後、鴨せいろや鴨南蛮でおよそ千五百円前後とされ、老舗の格を思えば手が届きやすい設定に感じます。鳴子峡帰りの一杯としても、温泉宿泊前の腹ごしらえとしても、幅広い場面で頼れる品ぞろえです。
店内には小さなこけしのコレクションが飾られ、鳴子ならではの温泉情緒が感じられる落ち着いた雰囲気です。大正10年(1921年)の創業と伝わる老舗で、100年以上にわたって受け継がれてきた味を、地元の常連客はもちろん、全国から訪れる湯治客・観光客が求めて足を運びます。旅館部を併設しているため、女将さんや接客の方の言葉遣いにも旅館らしい丁寧さが感じられ、壁に掛かる古い写真やお品書きの筆致からも、鳴子温泉と共に歩んできた時間の厚みが伝わってきます。蕎麦の一口目までの間に大崎市の湯の歴史が自然と胸に染みてくるようで、老舗という言葉の意味を静かに理解できる空間です。
立地は宮城県大崎市鳴子温泉湯元26-3。駐車場を備えているため車での来訪にも対応し、鳴子峡や潟沼、鳴子ダム方面のドライブ途中の食事にも向いています。鳴子温泉駅からのアクセスも良く、電車旅の食事処としても選びやすい場所です。旅館部は源泉を持つ湯宿で、日帰り入浴や宿泊で名湯を堪能することもでき、そばを味わってからひと風呂という湯の街らしい過ごし方も叶います。大崎市の他の観光拠点、たとえば中山平温泉や川渡温泉、東鳴子温泉といった鳴子温泉郷のほかの湯へも車で15分前後で行き来でき、湯めぐりの拠点として使い勝手が良い場所です。冬季の除雪状況は日々変わるので、事前の道路情報確認が安心です。
常連は温泉客だけでなく、地元・鳴子や川渡、中山平の人も多いようです。紅葉の季節の鳴子峡帰り、冬の湯治滞在中の一膳、雪解けの春先に軽く一杯といった具合に、四季の景色と一緒に味わう蕎麦が印象に残ります。そばのほかにラーメンや丼ものといった食事メニューもそろい、家族連れや子ども連れにも入りやすい構えです。夏場の緑濃い鳴子峡を歩いたあとの冷たいざるそばや、雪深い冬の日に鴨南蛮でじんわり温まる時間など、大崎市の四季を店の中に持ち込んで味わうような魅力があります。旅館併設ゆえに、宿の朝食後にそば処で昼を、といった宿泊者ならではの動線も組めるのが強みです。
営業時間や定休日は季節や旅館の都合で変わることがあるとされ、来店前に電話(0229-83-3131)や公式サイトで確認しておくと安心です。混み合う紅葉シーズンや連休は待ち時間が発生することもあるため、少し時間に余裕を持って訪れるのがおすすめです。とくに10月下旬から11月上旬にかけての鳴子峡紅葉ピークは、大崎市随一の観光集中期で、昼どきは1時間近く待つこともあり得ます。旅館併設という性質上、宿泊繁忙期には昼の営業時間が短縮されることもあるようで、その辺りは電話一本入れておくと安心です。冬の平日はむしろ静かで、湯治客と地元客だけの落ち着いた時間帯が広がります。
周辺には鳴子温泉神社、共同浴場の滝の湯、こけし工房などの湯元らしい見どころが徒歩圏に並び、食事の前後に散策を組み合わせると鳴子らしい滞在になります。鳴子峡や潟沼、鬼首方面まで足を延ばすなら、車で15〜30分圏内に見どころが集中しており、大崎市北西部の観光地としての厚みを実感できます。長い歴史を持つ温泉街の中に、100年以上続く蕎麦屋がひっそりと暖簾を守り続けていること自体が、鳴子温泉が観光地としての深みを維持し続けてきた証と言えるでしょう。湯上がりの湯冷ましに歩く距離感で老舗の味に辿り着ける、その導線の完成度こそが登良家の価値を象徴しています。
季節ごとの過ごし方も豊かで、春は雪解けの潟沼を眺めた帰り、初夏は若葉の鳴子峡を歩いた後、秋は紅葉の絶景を胸に刻んだ余韻の中で、冬は白い温泉街を歩いてからの一杯と、四季それぞれに登良家に立ち寄る文脈が用意されています。とりわけ紅葉の11月は、大堀の吊り橋から見下ろす渓谷美と鴨南蛮の熱いつゆがひと組の記憶になり、翌年また来たいと思わせる強度があります。真冬の雪見の湯上がりに、生蕎麦のきりっとした香りを味わう時間は、鳴子温泉でしか得られない贅沢のひとつです。
私にとっての鳴子は、湯と蕎麦と鳴子峡の景色がそろってこそという場所で、登良家はその三つを一日のうちに繋いでくれる存在に思えます。大崎市の観光の楽しみ方を象徴するような一軒で、子どもの頃、家族で鳴子温泉に出かけた記憶の中に、湯元の坂道と暖簾の光景がぼんやりと残っていて、その景色は今もほとんど変わらないままここにあります。老舗と温泉、そして季節の景色をひと連なりに楽しめる、大崎市を代表する立ち寄りどころの一つです。
店舗情報
- 住所
- 宮城県大崎市鳴子温泉湯元26-3 地図で見る
- 電話
- 0229-83-3131
- 営業時間
- 昼はそば処として営業(詳細な時間は季節・旅館の営業により変動するとされるため、来店前に要確認)
- 定休日
- 不定休とされる(来店前に要確認)
- 駐車場
- 駐車場あり
- 公式サイト
- www.toraya-ryokan.com で見る
※営業時間・定休日・メニューなどは変わることがあります。最新情報とご予約は各店の公式のご案内でご確認ください。 記載の誤り・修正・削除のご依頼は 運営者情報 からどうぞ。
