岩出山の旧城下町を歩いていると、内川の水音の合間に、ふとカルダモンやクミンの香りが鼻をくすぐる瞬間がある。香りの出所を追いかけていくと、東川原町の一角に構える一軒の店に行き着く。それが「ザビのカレー」だ。大崎市岩出山字東川原町の生活道路沿い、JR陸羽東線岩出山駅から徒歩十三分ほど、伊達政宗ゆかりの町並みの中に、パキスタン・インド料理の看板を掲げる異色の存在として佇んでいる。二〇二一年に開いたと聞くこの店は、宮城県北で本場のスパイスを味わえる貴重な選択肢の一つとして、着実に地元の食卓に居場所を確保しつつある。
看板料理はやはり大きく焼き上げるナンと、じっくり煮込むカレーの組み合わせだ。バターチキンの濃厚なコク、マトンカレーの深いスパイスの余韻、パラックパニールの緑鮮やかな滑らかさ、それぞれに異なる表情がある。宮城の郷土色を取り入れた「ずんだナン」も名物として案内されており、初めて訪れた客が驚く定番の一皿になっているようだ。ナンは顔ほどの大きさで供されることもあり、テーブルに置かれた瞬間の存在感が話題になる。価格帯はセットで千円台前半から中盤の設定で、PayPayなどのQR決済にも対応していると案内されている。辛さの調整に融通が利くとされる点も、家族連れには心強い要素だろう。
スパイスの熱気の裏側に立つのは、店主のザビさん。明るく気さくな人柄が、店の温度を作っていると評判だ。テーブル席と座敷を合わせて二十数席、全面禁煙、無料Wi-Fi、英語メニューまで用意されており、家族連れも観光客も、海外からの来訪者も同じテーブルに並べる寛容な空間になっている。壁に掛けられた小物や店内に流れる音楽まで含めて、岩出山の静かな町並みからひととき離れ、南アジアの空気に触れる体験ができる。SNSの発信からも店主の語り口が伝わってきて、来店前から店の空気に触れられる開かれた店だと感じる。
店の隣には食材店「ザビマート」があり、スパイスやハラルの輸入食材を扱っていると案内されている。料理好きにとってはここも見逃せない立ち寄り先で、店で味わったカレーの再現に必要な素材を持ち帰れるのが嬉しい。あ・ら・伊達な道の駅にも近く、有備館駅から歩ける距離、鳴子温泉方面へ抜ける動線の途中にも位置している。岩出山散策と組み合わせた半日コースを組む際、昼食にこの店を差し込むと、城下町散策の後半で自然と会話が弾む導線が出来上がる。駐車場は六台分ほど確保されているとされ、車での訪問にも配慮された立地だ。
日曜限定でカレービュッフェが催されることがあると聞く。バターチキン、豆のカレー、北インド風の野菜カレーなど数種を、ナンやライスとともに好みの量で味わえる催しで、家族連れや友人同士の休日にちょうどよい選択肢になっているようだ。ビュッフェの日は開店直後から席が埋まりやすく、じっくり味比べを楽しみたいなら早い時間帯を狙うのが賢明。古川や鳴子から車で足を運ぶ客の姿もあると案内されており、大崎市の外食シーンに小さな遠征需要を生み出している一日と言える。
営業は昼と夜の二部制で、昼は十一時から十五時三十分ごろ、夜は十七時から二十一時ごろとされ、水曜日が定休日と案内されている。ただし時期によって時間帯が動くことがあると読み取れるので、目当ての日は電話か公式Instagramで最新情報を確認しておくのが確実だ。テイクアウトにも対応しているとされ、内川沿いの散策の途中に持ち帰り、ベンチや車内で楽しむ使い方も出来る。ビュッフェ日以外の平日昼は比較的落ち着いた時間帯もあり、初訪問の人はまず定番セットで店の雰囲気を確かめると、次の来訪の目星が付けやすいだろう。
岩出山という土地は、伊達政宗が一時期居城とし、その後も文化と学問の香りを残してきた地域だ。旧有備館の庭園、内川の掘割、格子戸の残る家並みなど、歴史の層が幾重にも積み重なった一帯で、この店はその中に思いがけない異国の香りを差し込む役割を担っている。伝統的な景観と本場のスパイスが両立している風景は、少し前まで想像しにくいものだった。歴史ある町が、外からの文化を受け入れて新しい表情を持つ様子は、大崎市全体の食シーンの成熟を象徴しているようにも感じられる。
利用シーンを想像してみると、平日昼の一人ランチで濃厚なバターチキンを黙々と楽しむ時間、休日の家族外食で子どもと分け合いながらナンを引きちぎる時間、遠方の来客を意外性で驚かせる会食の場、そのどれもがこの店で成立する。特に県外や海外から訪れた友人を連れて行くと、岩出山という舞台と本格スパイスの組み合わせの意外性で、確実に話題になるはずだ。仕事仲間との気軽な打ち上げにも、記念日に近い落ち着いた食事にも寄り添える幅の広さが、この店の懐の深さを物語る。
私自身、通りに漂うスパイスの匂いに誘われて立ち寄った日のことを、今でもよく覚えている。ナンを一口ちぎり、バターチキンにくぐらせて口に運ぶと、頭の中で城下町の静けさと南アジアの熱気が同時に立ち上がる、不思議な感覚を味わった。日常の献立に少しの非日常を差し込みたい日、家族と会話を弾ませたい休日、そんな場面で店の名前が自然と頭をよぎるようになった。岩出山の食の風景に、こういう選択肢が加わったことの意味は、決して小さくないと感じる。
東川原町周辺は、内川の水路と生活道路が交わる、素朴で歩き心地のよいエリアだ。ザビのカレーはその中で、伝統と異国が同居する新しいランドマークになりつつある。有備館駅・岩出山駅から徒歩圏という立地は、公共交通で訪ねたい人にも優しく、鳴子温泉へ向かう乗り換え時間を使ったランチにも組み込める。隣接するザビマートで輸入スパイスを買い足し、自宅で本場の味を再現する遊びまで広がっているのが、この店の持つ懐の深さだ。伝統の町並みの中で、静かに新しい食文化を紡いでいる一軒として、これからの歩みも気になる存在だ。
店舗情報
- 住所
- 宮城県大崎市岩出山字東川原町8-7 地図で見る
- 電話
- 0229-25-3362
- 営業時間
- 11:00〜15:30(L.O.15:00)、17:00〜21:00(L.O.20:30)※変動あり
- 定休日
- 水曜日とされる(変動あり)
- 駐車場
- あり(6台)
- 公式サイト
- www.instagram.com で見る
- SNS
- Instagram・X
※営業時間・定休日・メニューなどは変わることがあります。最新情報とご予約は各店の公式のご案内でご確認ください。 記載の誤り・修正・削除のご依頼は 運営者情報 からどうぞ。