焼き上がり間近の時間に前を通ると、店の前の空気に石窯の香ばしい香りが薄く広がっている。バターと発酵した小麦の匂いに、焼き菓子の甘い層がうっすらと重なる、この時間帯だけの通り一面の匂いだ。ラ・パレット(La.palette)古川店は、大崎市古川李埣にある欧風菓子と石窯パンを合わせた工房型ベーカリーカフェで、栗原市築館に本店を置く「PALETTE(パレット)」の2号店として営業している。店内はパンとケーキの両方が並ぶ贅沢な構成で、看板は華美すぎず、街のパン屋の顔立ちを保っている。
最大の特徴は、店奥の石窯で焼き上げるパンである。香ばしく焼かれたクラストと、しっとりしたクラムのバランスが持ち味で、時間帯によっては人気商品が売り切れることも珍しくない。看板は「豆パン」で、カスタードクリームを織り込んだ生地に鹿の子うぐいす豆を巻き込んだものなど、甘さとふんわりした食感の組み合わせを楽しめる。惣菜系にはネギ味噌を使ったパンなど、地元向けのアレンジも並び、甘い系としょっぱい系のバランスが良好だと評判である。
菓子側の充実度も、ラ・パレットの顔である。ケーキ、焼き菓子、ギフトセット、冬季限定のチョコレートまで扱う幅の広さがあり、日常のパンから節目のケーキまでを一店舗で任せられる。価格帯は街のパン屋として素直な設定で、日常使いにも贈答にも耐えるラインが揃っている。ベーカリーと洋菓子店を、二階建てのように併走させているスタイルは、地方都市ではむしろ珍しくなってきた形態で、そのぶん通う理由の作りやすさが際立つ。
店主・スタッフの応対は「街のパン屋さん」らしい親しみやすい距離感とされ、初来店でも身構えず並べる空気感がある。パンの品揃えが多い分、選ぶ楽しみが大きく、迷ったときには相談しやすい雰囲気だ。焼き上がりの時間を狙って通う常連もいて、朝の食卓、来客用の手土産、夕食後のデザートと、生活のさまざまな場面に応える多面性を持っている。菓子とパンの両輪を丁寧に運営する店として、地域での存在感がしっかり根付いている。
立地は古川李埣で、駐車場を備えている。大崎市らしい車移動の生活に自然に馴染み、買い物や送り迎えのついでに立ち寄れる距離感である。三本木・松山方面や、鳴子への行き帰りにも通り道として使いやすい位置で、近隣の勤め先や学校の周辺住民にとって、日常のパン購入と、贈答用のケーキや焼き菓子の両方を一店舗で済ませられる利便性は大きい。手土産文化が根強い大崎の暮らしにおいて、こうした「贈っても普段でも」使える店は貴重な存在だと言える。
屋根付きのテラス席があるため、買ったパンをその場で味わって帰る、というちょっとしたご褒美時間も作りやすい所である。子どもが自分で選んだパンを、屋根の下の椅子で頬張っている姿はこの店ではよく見かける光景で、家庭ではなかなか許しにくい「買ってすぐ食べる」小さな贅沢を、店の側が受け止めてくれるような設計になっている。
常連には家族連れが多いとされ、季節ごとに登場する限定商品を目当てに通うファンもいる。夏場は冷菓や焼き菓子、冬季はチョコレートといったように、季節を反映した品揃えが楽しめるのも菓子店を兼ねる強みだ。バレンタインやクリスマス、ホワイトデーなどの節目には限定ギフトが並び、大崎の家族の年中行事の一角に自然に組み込まれている。石窯パンの香りが漂う店内では、選んで、袋に詰めて、家に持ち帰るまでの時間そのものが、小さな楽しみになるタイプの店である。
訪問時の注意として、営業は10:00〜19:00、定休は不定休と案内されている。人気商品は早い時間帯に売り切れることがあるため、狙っているパンや焼き菓子がある場合は午前中の来店が安心だ。予約可否や季節商品の在庫は公式インスタグラム・フェイスブックで随時発信されており、事前にチェックしておくと空振りが減る。電話は0229-24-8010。贈答用のケーキは日にちに余裕を持って予約するのが確実で、繁忙期は早めに枠が埋まる傾向がある。
私自身がこの店で感心するのは、パン屋と洋菓子店を並列で回しながら、どちらも「片手間」に見せない仕事ぶりである。豆パンひとつの断面にも、クリームと餡のバランスに手を入れた跡が見えるし、ケーキの飾りひとつにも、量産の菓子とは違う手数がかかっている。この規模の店で、両方の水準を維持するのは相当な労力のはずで、その労力の結果が「街のパン屋」として溶け込んで見えるところに、パレットの強かさがある。
周辺との組み合わせでは、古川駅前の商店街散策や、道の駅おおさきでの買い物、三本木・鹿島台方面へのドライブと組み合わせやすい立地だ。手土産を選んで、次の目的地に向かう前に一息、という使い方が生活のなかに馴染む。鳴子温泉方面へ向かう行きがけに、宿で食べる翌朝のパンを仕込むというルートも実用的で、旅の始まりの気分を静かに整えてくれるような立ち寄り先になる。
李埣周辺は住宅街と学校が混じる地域なので、平日の朝夕は通勤通学の車が多く、駐車場の出入りは少し余裕を見ておきたい。逆に平日昼過ぎは車の流れが落ち着き、店内もゆっくり選べる時間帯になりやすい。買い物の頻度が高い家族にとっては、平日昼のルーチンに組み込みやすい店であり、週末は少し早めに動くのが賢い付き合い方だと言える。
本店を持つ栗原市築館の系譜が、古川李埣の住宅街の一角で違和感なく息づいているのを見ると、店の側の適応力の高さを感じる。都市部の華やかなパティスリーに寄せるのでもなく、素朴すぎる田舎のパン屋に振り切るのでもなく、その中間の絶妙な位置に着地しているところが、この店の長期的な強さになっている。日常も節目も、この店で完結させたい、という気持ちにさせる作りである。
利用シーンとしては、平日の朝食用ロールパン、休日の昼食用惣菜パン、来客用の手土産焼き菓子、家族の誕生日ケーキ、季節限定のギフト、といった多層の使い方ができる。派手な演出ではなく、石窯の火と、地元向けのアレンジと、季節ごとの菓子で、じわじわと日常に根を張っていくタイプの一軒。古川の住宅街の一角に、この規模と質の店が静かにあること自体、大崎市の暮らしの層の厚さを支える要素のひとつになっているように思う。
店舗情報
- 住所
- 宮城県大崎市古川李埣1-13-31 地図で見る
- 電話
- 0229-24-8010
- 営業時間
- 10:00〜19:00(変動する場合あり)
- 定休日
- 不定休
- 駐車場
- あり
- 公式サイト
- www.palette-b.co.jp で見る
- SNS
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