夜の台町の路地に灯りがぽつぽつと入るころ、季節の味 つかさの控えめなのれんの奥から橙色の光が漏れてくる。JR古川駅の西口から歩いて十分ほど、古川台町の商店街の一角にあり、外観はこぢんまりして見えるが扉を開けると奥行きのある店構えが姿を現す。半世紀を超えて古川で商いを続けてきた重みが、格子戸や磨き込まれた床、アンティーク調の家具のあちこちににじみ、昭和の香りと大崎市の郷土色が同居する独特の空気を作っている。所在地は宮城県大崎市古川台町3-5、電話は0229-22-3009。
創業は昭和39年(1964年)と伝えられ、大崎市の中心市街地・古川の飲食店史においては相当な古株にあたる。都市が拡張し飲食店の顔ぶれが目まぐるしく入れ替わるなかで、同じ場所で同じ屋号を掲げ続けてきた店には、一日一日の営業を積み重ねた重量がある。台町のこの界隈は、昔ながらの飲食店が濃く残る一帯で、通りを歩くだけでも古川という街の時間の層が感じ取れる。その中でも、このんれんは地元の飲兵衛たちにとって、迷ったときに戻ってくる目印のような存在になっている。
看板料理は、40年以上受け継がれていると案内される「かに甲羅揚げ」。白身魚とえびのすり身に季節の野菜を合わせ、蟹の甲羅にたっぷり詰めて揚げ、特製のタレを添えて出す一皿で、初代から続く手仕事の代表格だ。刺身は石巻港などで水揚げされた鮮度の高い魚介を使い、宮城県産の仙台牛を炭火でじっくり焼き上げる料理も評判に挙がる。地魚と炭火の香ばしさ、甲羅揚げのふくよかな存在感が、この店の献立の骨格を作っている。単品料理は中価格帯、コース利用でも気張らない範囲に収まる印象で、普段使いから接待までを一軒でまかなえる幅の広さがある。
梅酒やかりん酒など、店主が仕込む自家製果実酒が揃うのもこの店ならではの楽しみ。地酒は宮城県産の一ノ蔵、日高見、伯楽星など旨みの強い銘柄が並ぶ傾向にあり、料理と合わせて頼むと店主が飲み口の違いを軽く教えてくれるのも一興だ。日本酒に馴染みのない客には度数の低い果実酒から入るという道もあり、初めて訪れた人が構えずに献立を組み立てられる余白が用意されている。器や酒器も落ち着いた選び方で、飲み物の香りを邪魔しない設え。
店を切り盛りするご主人と女将さんは、常連客の顔を覚え、少人数の晩酌にも大人数の宴会にも同じ落ち着きで対応してくれると評される。メニューを機械的に運ぶのではなく、旬の素材について一言添えてくれる距離感が心地よく、初めての客にも「今日はこれがおすすめですよ」と気軽に声を掛けてくれる空気がある。帰省客からは「この味を食べると古川に戻ってきたと実感する」という声が聞こえてくることもあり、街の外に散った家族がまた集まる目印としても機能している。
立地は古川台町3丁目で、大崎市役所や古川駅周辺の中心市街に近い。飲み屋街の一角にあるため二軒目・三軒目に組み込みやすく、逆に一次会をじっくり構えたい夜の“主軸”としても選ばれる。専用駐車場は基本的に持たないため、車で訪れる場合は近隣のコインパーキングを利用し、そのぶん腰を据えて酒を楽しむのが現実的な使い方。JR古川駅からは徒歩十分ほどで、東北新幹線で県外から出張してきた人が、一人で腰を据えて食事をするのに向いた距離感でもある。
個室と大小の座敷を備えるため、家族の集まりや職場の宴会にも柔軟に対応してくれる。法事や祝いの席で使われることも少なくないと聞き、大崎市古川の飲食店らしい“暮らしの節目の店”としての性格が濃い。日常の晩酌だけでなく、家族の門出や職場の区切りといったハレの場面を任せられる店は、街に多くない。半世紀を超えて続いた店にしか出せない安心感が、そうした場面に選ばれる理由になっている。
季節ごとの献立は大崎の四季にきっちり寄り添う。春先は初鰹や山菜の天ぷら、夏は冷やし料理と冷酒、秋は戻り鰹やきのこ、冬は牡蠣や炭火の牛料理と、素材の顔ぶれが月ごとに入れ替わる。通うたびに違う一皿と出会えるので、常連が飽きずに戻り続ける仕組みが献立そのものに埋め込まれている。地魚と炭火焼きを軸にした献立は、季節ごとに顔ぶれが少しずつ入れ替わり、通い甲斐のある店として古参の常連に支持されている。
訪問時の注意点として、営業は夜が中心で、17時30分頃から23時頃まで(ラストオーダー22時30分頃)、日曜が定休と案内される。時間や休みは変わり得るので、初めての訪問や大人数の予約の際は電話で当日の状況を確認しておくと安心だ。コース料理を頼む場合は事前予約が前提と考えたほうがよく、個室希望の場合も早めの連絡が確実。会計は現金のほか一般的なキャッシュレスに対応しているとされるが、詳しくは店に確かめてから訪れると失敗がない。金曜土曜の夜は混雑しやすく、カウンター席を確保したいなら早めに動くのが賢明だ。
台町の界隈は、大崎市古川の中心市街のなかでも飲食店が濃く残る一帯で、周辺には昭和の香りを残す居酒屋やスナック、寿司屋、ラーメン屋が肩を寄せ合っている。季節の味 つかさで一次会をじっくり楽しんだあと、二次会に近くの一杯呑み屋へ流れる、あるいは締めのラーメンに歩いて向かうという古川ならではの夜の使い方は、地元の宴の定番動線。半世紀を超えて続く一軒があるということは、そのまわりの店も含めた飲食の生態系が続いているということでもあり、街の魅力を測るときにこういう老舗の存在は大きな指標になる。
他店との違いという観点で言えば、この店の魅力は「派手さで押さないこと」に尽きる。看板メニューは半世紀前から続く手仕事、季節替わりの料理は地元港と近郊の畑からの素材、酒は地酒と自家製果実酒。派手な演出や流行りの盛り付けに走らず、季節と手仕事で押してくるタイプの店だと感じる。半世紀以上続いた重みは、その一軒だけの魅力ではなく、大崎市古川という街そのものの深みでもある。次の帰省や出張のときに、腰を据えて長い夜を過ごしたい人に、静かに紹介したい一軒だ。
店舗情報
- 住所
- 宮城県大崎市古川台町3-5 地図で見る
- 電話
- 0229-22-3009
- 営業時間
- 17:30〜23:00頃(L.O.22:30頃)とされる
- 定休日
- 日曜(変動の可能性あり)
- 公式サイト
- wasyokuya.com で見る
- SNS
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