古川駅の東口を出て、緒絶川沿いを南下し、古川高校の校門が見える路地を左に折れると、道の途中にオレンジ色の小さな看板がぽつんと灯っている。きゅうせい堂は、そんな大崎市古川幸町1-7-1の路地にひっそりと構える老舗の菓子舗兼ベーカリーである。創業は昭和4年(1929年)とされ、地元の暦で数えると100年近い時を刻んできたことになる。JR古川駅から歩いて10分ほど、古川高校の正門向かいという場所柄、下校時間帯には制服姿の生徒が数人で連れ立って寄っていく光景も見られる。店構えは決して大きくないが、路地に埋もれるように建つ佇まいがむしろ長く続く店ならではの落ち着きを感じさせる。
品揃えは、パン、ケーキ、焼き菓子、和菓子と幅広く、菓子舗としての基盤の上にベーカリーが乗っている印象を受ける。パンは工房直売ならではの焼きたてが並び、食パン、サンドイッチ系、まぐろマヨ、たまご、季節限定の惣菜パンまで種類が豊富で、人気の品は午前中で売り切れる日もあると案内されている。看板の一つがバームクーヘンで、外はしっとり中はふんわりと焼き上げ、チョコレートでコーティングした変わり種や、宮城県産の米粉、旬のフルーツを使った限定品などが並ぶ。和菓子は季節の練り切りや饅頭、洋菓子はケーキやプリンが並ぶ日もあり、日常のおやつから贈答品まで一店舗で完結できる懐の深さがある。
店の空気感は、いい意味で昔ながらで、地元の年配のお客さんが名前で呼ばれるような親しさがある。子どもの頃にここのパンやバームクーヘンを食べて育った世代が、今度は自分の子どもを連れて訪ねてくるというサイクルが自然に続いていて、そんな連鎖が可能な菓子舗は今の大崎市に決して多くない。世代の交代を店側もお客側も自然に受け入れているのが、老舗の懐の深さと言えるだろう。店員さんの応対は決して大声を張るタイプではなく、地元の顔なじみに一言添えて包む、そんな柔らかな接客が続いている。売り場の空気そのものが、時代の音量を少し下げてくれるような、心地よい古さを持っている。
立地は古川駅と古川中心市街地からのアクセスがよく、車がなくても徒歩や自転車で気軽に寄れるのが強みである。駅から幸町方面へ歩けば10分ほどで着き、古川高校のあたりを目印にすればまず迷わない。手土産に和菓子や焼き菓子、朝食用にパンを買い足す、といった使い方がしやすく、市街地散策の途中で立ち寄る場所として自然に組み込める。市外から新幹線で古川に来た人が「古川らしい土産」を探すときに紹介したくなる一軒でもあり、大崎市古川の顔を担う菓子舗の一つと言って過言ではないだろう。駐車スペースは限られる場合があるので、車の場合は近隣のコインパーキングと組み合わせるのが賢明だ。
常連の楽しみ方としては、季節限定のパンや、母の日・敬老の日など節目の菓子折り、あるいはお盆や正月といった帰省シーズンの手土産、といった年中行事に紐づいた使い方が多いようだ。バームクーヘンは贈答用としても選ばれやすく、宮城の米粉を使うようなご当地色のある品は、県外への手土産にも喜ばれるとされている。パンも季節に合わせて種類が入れ替わるので、通うたびに小さな発見があるのがこの店らしい魅力である。春の桜、秋の栗やかぼちゃ、冬のクリスマスシーズンの限定ケーキなど、大崎市の四季を感じさせる限定品はチェックしておきたい。
訪問時に気をつけたいのは、パンは早朝からの販売で、目当ての品がある場合は午前中の早い時間帯を狙うのが確実な点だ。営業時間は9時から18時ごろとされ、定休日は日曜が中心とされるが、季節や催事によって変則になることもある。大崎市外から狙って行く場合は0229-22-1966に電話で確認しておくと安心だ。古川高校向かいという場所柄、平日の夕方は下校時間帯に賑わい、休日の午前は家族連れが多いなど、時間帯で店の雰囲気が変わる。バームクーヘンなど贈答用の詰め合わせを頼む場合は、事前予約しておくと在庫切れの心配がなくスムーズに受け取れる。
子どもの誕生日ケーキを予約する家庭も少なくないと聞く。市販のパティスリーやチェーン店とは違い、老舗菓子舗で作ってもらったケーキは記憶に長く残るタイプの体験になる。「幸町のあの店のケーキ」というだけで祖父母世代にも意味が伝わる、その通じやすさこそが100年近く続いてきた店の資産だと感じる。誕生日、七五三、入学祝い、卒業祝い、還暦——人生の節目のたびに、この店の紙袋を手に取ってきた家族が古川には何世帯もあるはずで、それはこの菓子舗が街の記憶装置として機能してきた証拠でもある。
周辺との組み合わせは、古川駅から中心市街地を抜けるコースが自然に成立する。駅前アーケード、七日町、緒絶川沿いの遊歩道、老舗の和菓子店や飲食店を巡りながら、きゅうせい堂を最後の手土産購入地点として組み込むと、市街地の一日散策がきれいに締まる。古川高校向かいという場所柄、卒業式や入学式のシーズンには保護者や卒業生の姿もあり、幸町エリアの季節の風物詩を感じられる場面もある。少し足を伸ばして緒絶川沿いを歩けば、川面と柳が織りなす古川らしい景観に触れられ、菓子を片手にゆっくり歩く時間は、旅行者にも地元民にも心地よい選択肢だ。
歴史的な背景を少し補足すると、大崎市古川の幸町エリアはJR古川駅の西側に広がる古くからの住宅・商店混在地区で、戦前から続く商いが今も点々と残っているのが特徴だ。きゅうせい堂の創業年である昭和4年は、日本全体で洋菓子文化が根付き始めた時期でもあり、パン・ケーキ・和菓子・焼き菓子と幅広く扱う菓子舗の形は、そうした時代の名残とも読み取れる。100年近く同じ場所で焼き続けているという事実そのものが、大崎市古川の街の連続性の一部を担っていると言ってよさそうだ。戦後から高度経済成長期、平成、令和と時代が変わっても、地元の子どもから大人までの「甘い時間」を支え続けてきた事実は、街の記憶そのものと言える。
利用シーンを整理すると、朝食用の食パンやサンドイッチ、平日昼のちょっとしたおやつ、週末の贈答用バームクーヘン、季節の節目の和菓子、家族の記念日ケーキと、暮らしの中の複数の場面がこの一軒で完結する。派手さはなくとも、日々の食卓や記念日の傍らに静かに寄り添う菓子舗として、大崎市古川の暮らしを支え続けてきた。市外の友人が古川に遊びに来た日、駅を降りて最初にどこへ案内するかと聞かれれば、その候補の一つに幸町のこの店の名前が挙がる——そんな存在感を持つ一軒である。
今後への期待という視点で言えば、老舗菓子舗の持つ物語をどう次の世代に手渡していくかは、大崎市全体の商店文化にとっての課題でもある。SNSや通販の登場で全国どこの菓子舗も同じ棚に並ぶ時代になったが、それでも路地の奥のオレンジ色の看板の下に立ち、焼きたてのバームクーヘンを紙袋に入れてもらう体験は代替不能な価値を持ち続けるだろう。100年近く積み上げてきたこの店の時間が、これからも大崎市古川の街の匂いの一部として続いていくことを、地元の一人として静かに願っている。
商店街が少しずつ姿を変えていく中で、こうして幸町で焼きたてのパンとバームクーヘンの匂いを守り続けている一軒があること自体が、大崎市の街の記憶を支えているように思う。ふらっと寄って一つ買って帰るだけで、少し嬉しくなる店——それがこの菓子舗の一番の強みだ。遠方へ帰る親戚に持たせる手土産の定番として重宝している家庭も多く、この店の紙袋が新幹線の網棚に乗って全国へ運ばれていく光景は、古川という街の日常の中の、少し誇らしい風景の一つだと感じている。
店舗情報
- 住所
- 宮城県大崎市古川幸町1-7-1 地図で見る
- 電話
- 0229-22-1966
- 営業時間
- 9:00〜18:00頃とされる(パンは早朝からの販売)
- 定休日
- 日曜とされる
- 公式サイト
- www.kyuseidou.jp で見る
※営業時間・定休日・メニューなどは変わることがあります。最新情報とご予約は各店の公式のご案内でご確認ください。 記載の誤り・修正・削除のご依頼は 運営者情報 からどうぞ。
