岩出山二ノ構、旧有備館のすぐ近くを走る国道47号沿いに、鮮やかな青い扉が一枚だけ景色を切り取るように立っている。BLUE FARM CAFEの目印はまさにその色で、周囲の落ち着いた町並みのなかで、そこだけ空気の色が違って見える。平日午後に扉の前に立つと、鳥の声と国道を通る車の音が交互に耳に届き、大崎市の里山のスケール感がそのまま体に入ってくる。営業日が限られている分、営業日の店内は静かで、時間が徐々に横へ広がっていくような感覚がある。
この店は、東北の農家や作り手をデザインの力で支援するブルーファーム株式会社が2016年に地域とデザインの接点として開いた場を出発点に持つ。2020年10月には現店主・早坂和恵さんが引き継いでリニューアルオープンし、今の形へと連続的に育ってきたと案内される。岩出山大学町のあたりは、伊達政宗が青年期を過ごした岩出山城下の名残と、陸羽東線の駅前らしい生活感が同居する独特のエリアで、そこに“農・食・デザイン”を束ねる小さな拠点が置かれた意味は思いのほか大きい。
看板は自家製バターサンドで、店主が初めて手がけた商品として長く磨き上げてきた一品だと語られる。宮城県産の米粉と小麦粉を合わせたクッキーに、季節のジャムを合わせたバタークリームと果物を挟むという構成で、サクサクの生地とやわらかいクリームのコントラストが持ち味だ。ジャムは月替わりで顔ぶれが変わり、素材の香りが真ん中に据えられている。店内に置かれた小さな菓子棚には焼き菓子も並び、テイクアウトで持ち帰る使い方をする常連も少なくない。
コーヒーは仙台のロースター「ほの香」にブルーファーム専用としてブレンドしてもらったスペシャルティコーヒーをハンドドリップで淹れる形と案内される。しっかりした苦味のあるカフェオレも人気が高いと聞く。月替わりのスイーツや季節に合わせた焼き菓子と組み合わせたカフェセットは、価格帯としては千円台前半あたりを見ておくと安心。大崎市岩出山の里山の空気と一緒に味わう菓子は、都会のカフェとはまた違う説得力を持って口に届く。
店主の早坂さんはデザインの世界から地域と食に軸足を移してきた方で、接客はやわらかく、質問すれば素材や作り手について丁寧に教えてくれる。押しつけがましいトークではなく、必要な言葉だけを差し出してくれるような距離感で、初めての客でも構えず座っていられる。器や道具、壁の板材や照明の傘は、店主が信頼するものづくりの人たちの手による品で、鳴子の木工作家のシェードや宮城の古材も使われている。会話の端々に「この皿を作ったのは」「この板は」といった小さな解説が挟まり、いつの間にか大崎から鳴子、宮城全体のものづくり地図が頭の中に描かれていく。
立地はJR陸羽東線・有備館駅から徒歩圏、車の場合は店舗横に2台程度の駐車スペースがある。国道47号沿いなので鳴子温泉方面、鳴子峡や中山平温泉へ向かう道すがら立ち寄る使い方もしやすい。有備館駅から旧有備館及び庭園、感覚ミュージアムへと歩いて回るコースの休憩点としても位置がよく、大崎市岩出山の観光導線の中でちょうど息継ぎしたくなる場所に置かれている。国道沿いだが看板は控えめなので、初めての人は青い扉を目印にゆっくり走った方が見落とさない。
月替わりのスイーツや季節のジャムを軸に、通うたびに顔ぶれの少し違う品に出会えるのがこの店の楽しみ方だ。春は苺やルバーブ、夏は桃やブルーベリー、秋は無花果や栗、冬は柑橘やりんごといった具合に、大崎市岩出山周辺で採れる素材や東北の作り手が手がける果実を織り込んだ内容になることが多いと案内される。店主が仕事で繋がった作り手のイベントが企画される日もあり、Instagram(@bluefarmcafe)や公式サイトで告知されるのが常。常連は営業日の朝一に予約や取り置きの相談を入れる方も多いようで、限られた開店日を上手に使い切る文化がここにも根付いている。
訪問時に一番気をつけたいのは営業日の少なさで、金・土曜など特定曜日のみ、時期によっては月末の土日のみの案内となる時期もあると告知されている。突然訪ねて「今日はやっていない」ということが十分あり得るので、必ずInstagramか公式サイトで直近の営業日を確認してから車を出したい。営業時間はおおむね11時から16時ごろとされ、席数は6席ほどとこぢんまり。ピーク帯の午後1時前後は満席になりやすいので、鳴子方面へ向かう途中に組み込むなら少し早い時間帯を狙うと落ち着いて過ごせる。電話0229-25-5442でも問い合わせは可能だ。
冬場は路面凍結もあるため、鳴子方向から下ってくる際は速度を落として近づきたい。国道47号は雪の日は融雪剤で路面が黒く濡れて見えることが多く、慣れない運転者は距離感を掴みにくい。営業日と天候の両方が噛み合った日にたどり着けたときのご褒美感が、この店の魅力を一段引き立てている面もある。行ける日が限られる店だからこそ、訪問の一回一回の記憶が強く残っていくのだと思う。
岩出山という土地の背景と、東北のものづくりの現在地が、一杯のコーヒーと一枚のバターサンドに畳み込まれているように感じる場所で、青い扉を開けた瞬間から店を出るまでの時間の密度が違う。地元に住んでいても、ここでの一時間はちょっとした遠出の記憶になる。派手さはないが、素材と作り手の情報が過不足なく手渡される時間は、都会のカフェチェーンでは味わえない種類の贅沢だ。
周辺の組み合わせで言えば、旧有備館及び庭園、感覚ミュージアム、岩出山城跡の散策とあわせて午前中に軽く歩き、昼過ぎにこのカフェで一息、そのまま国道47号を鳴子方面に上がって鳴子峡や中山平温泉へ抜けるコースが気持ちよい。逆に古川方面から来る場合は、三本木のひまわりの丘や大崎市街の食事処と組み合わせて岩出山を折り返し地点にする一日も作れる。大崎市は距離感が広いので、こういう小さな目的地を1つ挟むと、ドライブ全体のリズムが整いやすい。
今後への期待という点で締めるなら、営業日を限定しつつ品質を守り続けるこの店の姿勢は、地方の小さなカフェの持続可能な形の一つを示していると思う。人手を無理して伸ばすのでなく、営業日を絞ることで一日ごとの密度を上げ、その分だけ作り手や素材の話に時間を割く。岩出山の里山の速度と歩調を合わせたスタイルが、この先も長く続いてほしいと素直に感じる。
店舗情報
- 住所
- 宮城県大崎市岩出山二ノ構65 地図で見る
- 電話
- 0229-25-5442
- 営業時間
- おおむね11:00〜16:00(時期により変動。金・土曜など営業日が限られるとされる)
- 定休日
- 営業日限定(金・土曜など、公式SNSの案内日以外は休みとされる)
- 駐車場
- あり(店舗横に2台程度)
- 公式サイト
- bluefarm.co.jp で見る
- SNS
- Instagram・公式サイト
※営業時間・定休日・メニューなどは変わることがあります。最新情報とご予約は各店の公式のご案内でご確認ください。 記載の誤り・修正・削除のご依頼は 運営者情報 からどうぞ。
